Interview

2024.08.05

外川

3.9 miles projectで捉えるまちづくりとは何か

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3.9 miles projectで捉えるまちづくりとは何か

金田 隼人さん

株式会社ネームレス代表取締役 / 深谷市渋沢栄一政策アドバイザー

地元深谷市の偉人・渋沢栄一の生き方を目指し、これまで20社の設立に参画し、50社の設立に関与。独自の伴走的思考法であるプロデュースシンキングを研究し、大手企業や自治体、教育機関で授業も行っている。リレイル代表の和泉と出逢い、銚子に何度も通い、3.9 miles projectの立ち上げ時から参画。


3.9 miles projectでは、銚子の挑戦インフラを創ることを掲げ、分散型ホテル構想の推進や様々な挑戦者と共に新しい場づくりや事業を展開しています。今回は、3.9 miles projectのプロデューサーとして活動する金田さんが捉える銚子を舞台にしたまちづくりへの挑戦についてお聞きしました。


まちづくりの根幹はDNAづくり

和泉:金田さんにとって、まちづくりに必要なものは何だと思われますか?

金田:まちをつくることに対して様々なアプローチがあると思っています。

産業づくり、教育、土地開発、まちに関わるすべての活動が何かしらの社会彫刻である中で、3.9 miles projectで大事にしているのは、まちのDNAをしっかりと残していくことであると思っています。それがまちの文化になり、まちの中の当たり前になり、ひいては教育に繋がり、土地の開発や新たな商売を生むというところに関しても一貫するところがあると考えています。DNAづくり根幹にしながら、どう形にしていくのか、挑戦していくのか、皆で価値を分かち合えるのか。そういうところが根幹にあるのではないかと感じています。

和泉:金田さん自身をもう少し深掘りしていきたいのですが、金田さんの地元である深谷の偉人でもある渋沢栄一が唱えた道徳経済合一説は、まちづくりに通ずる考え方だと思うのですが、金田さんにとっての地元や渋沢栄一との接点を教えてください。

金田:私自身、幼少期から渋沢栄一の生き様に尊敬の念を持っており今の活動に繋がっています。

今の質問に対して思うことは、「個を確立して他と調和する」という考え方がベースにあると考えています。適材適所で自分の素養や強み、また、根幹の想いや意思は、十人十色だし百人百様の考え方があるという前提の中で、それを1つの地域、あるいは社会というコミュニティとして括った時に、まちという存在が浮かび上がってくると思います。同じ地域の中で考えたときに、お互いに手を取り合いながら、お互いの良さを引き出し合う、生かし合うということを、どのように社会実装していくのか、あるいは社会彫刻していくのかというところは、渋沢栄一が当時、日本という国をどのように捉えるかという中で、様々な経済活動や社会福祉を様々な人と実践していったところに繋がると思います。

共通して言えるのは、ビジネスとして収益を立て付けていくことは資本主義経済の中で持続可能性あるい発展性という観点で切っても切り離せないことであり、非常に重要である一方で、自分自身の利潤だけを追い求めすぎるがあまり、誰かが不幸になるとか、そのしっぺ返しを食らうとか、一時的な成長が起こっても中長期的には衰退していくこともあります。そのため、常にアップデートしていきながら、人と共にどのようにまちという単位で捉え、経済を発展させていけるのかということが根幹に捉えるべき考え方としてあるのかなと思います。


地域内に閉ざされたものだけではなく他の地域とのレールを敷く

和泉:金田さん自身として3.9 miles projectを通して、チャレンジしたいことはありますか?

金田:ずっと銚子に根ざして活動するというのは前提として、銚子で何か起こした人が、他地域にその考え方や商売を持っていくことも含めて、銚子発のものがどんどん起こっていく流れをつくれたらと思っています。3.9 miles projectは、銚子電鉄の沿線の距離を指していますが、まちを繋ぐ意味でのレールであると、過去から繋がれてきたレールをまた新たにレールにアップデートしていく和泉くんの会社名でもある「リレイル」という意味があります。

これは地域内に閉ざされるものだけではなく他の地域とのレールを敷くと言う役割にもなっていけば良いなと思っていますので、まずは地域内でしっかりと価値を育んでいく、色んな挑戦したいという想いを持つ方々と共に挑戦していくことは大前提の上で、他地域に熱量を伝搬させていくことも視野に入れたいと思っています。銚子という地域でも「こんなことができた」「こういう想いある人たちとできた」というロールモデルとして、他の地域にも還元していけると銚子の歴史でもあるかつて紀州から渡ってきた人たちが、銚子という地に根付き、商売を始めた背景の逆流を令和の時代から起こせるといいなと思っています。

金田:地元の意志と挑戦から始まるまちづくりという意味は、地域内の人だけでやるというのではなく、そのまちで育ってきた人、成長してきた人の意思が、そのまちのDNAを一番映していると思うので、そこが最初のエンジンであるべきなのではという意味で言語化しています。そのため、僕も銚子の外から来た人間として、和泉さんや渡辺さんをはじめ、銚子で育った方、銚子の未来を思う方の意思や想いをリスペクトしていますし、大事にするべきだと思っています。

そこからの挑戦が起源となって始まっていく、様々なプロジェクトや様々な人との協働が起こっていくことをイメージしています。あくまで他を寄せつけない、他と交わらないという話ではなく、地元が起点となって、最初のエンジンとなって始まっていくと良いと思い、言葉にさせていただきました。

和泉:3.9 miles LABの位置付けについて教えていただけますか。

金田:3.9 miles projectでは、まちづくりの活動に一緒に挑戦したいという方との接点をつくっていきたいと思っているわけですが、興味はあるけどすぐに挑戦する意思が醸成されるかというとタイミングも含めて時間をかけて挑戦していきたいという方もいると思います。一方で、このようなキッカケを待っていたという方も実際にいますので、3.9 miles LABを通じて、お互いの想いをぶつけ合いながら、0.1となる想いの種・価値の種を発掘し、1にしていくプロセスを一緒に伴走しながら、銚子でどのように表現していけるのか、3.9 miles projectを通じて、どのように挑戦していけるのかを見出せるような場づくりとして、3.9 miles LABを進めていければと思っています。

人によってバックグラウンドが様々な中で、新しく自分で商売を始めるとなると未経験なことに飛び込むという方も多いと思いますので、その不安を解消することを大事にしながら、どのように進めていけるのかお互い提案し合えるような場づくりができると挑戦が育まれやすくなるという考えのもと、3.9 miles LABを立ち上げていこうとなりました。


50年あるいは100年先を見据えたまちづくりの形として捉える

和泉:金田さんへのインタビューを通じて、奇しくもTokiyoriを始める谷川くんも同じことを言っていまして、Tokiyoriメンバーが、銚子で実績とブランドをつくり、将来は自分の地元でお店をやりたいと言っていて、それを後押ししていきたいと言っていましたので、金田さんも同じ銚子発で、他の地域とのレールを結びたいということに対して、本当に一致しました。

金田:想いを起点にまちづくりをしていくということができるプロジェクトだと思っていまして、商業的に、あるいは経済合理性の中だけでまちをつくろうとすると、どうしても都市型になっていくというか効率性や採算性がどうしても前提になってしまうのですが、まちに根ざした形や地域が育んできたものを大事にしながら、どのようにまちづくりをしていくかという観点で、分散型ホテルに始まり、地域の方々とともに、このまちをどうしていくのかをディスカッションしながら挑戦していくことに意義があると思います。それこそがここ10年20年だけの話ではなくて、50年あるいは100年先を見据えたまちづくりの形として捉えるべきことなのではないかと思います。

不自然なことをやると自然に戻ろうと必ず反発が生まれます。強がろうとするということは無理をしているという状況だと考えており、いかに本来ある自然体で、まちとして価値をつくっていけるのかが大事なことだと考えています。

和泉:ありがとうございます。今後も記事を通じて発信していきますので、金田さんにも2回目、3回目と登場していただきたいと思っています。今回はインタビューの機会をいただき、ありがとうございました